さあ始めよう「物理学(質点系力学)」の講義を!

  担当は.工学部情報工学科の「野村」です.

  この講義は,昨年までの担当と異なっていますので試験の過去問題は役にたちません。みなさんは高校で「物理TB」をとってきており,その中のかなりの部分が「物理U」もとってきております.しかし大学入試では,40%近い学生が「化学」を選択しています.また,若干名であるが,高校で「物理」の授業を全く受けていない学生もいます.

  そこでこの授業は,以下のような狙いで行います.

  1. 目標
      原理・公式からの出発ではなく,全て現象からスタートします.そしてその現象からどのようにして原理が導き出されたのか,また同じ現象が高校と大学とでは取り扱い方がどのように異なっているのかを理解してもらいます.数学的な取り扱いが大きく変わります.微分,積分,微分方程式,ベクトル等が数学的取り扱いの中心です.受験勉強で行ってきた「原理・公式」に基づいて既知の問題を解くというようなことが中心ではありません.問題を解くことができるのではなく,どれだけ深く理解できたかが重要なのです.
  2. 授業のレベル
      この授業の目標に適した「教科書」はありません.しいて言えば,高校の「物理TB」と「物理U」の教科書です.入試で物理をとらなくても,高校で物理をとっていれば明快に理解できる講義をする予定です(これは,小生にとって大変なことですが).各自,高校で使った教科書を持ってきて下さい.

    また,高校で物理をとってこなかった学生にもわかるように授業を行う予定ですが,もしわからなければ,5コマ目を演習の時間としていますので,そこでじっくりと対応します.

  3. 授業の開講スケジュール
      この授業は,6月5日に開始して,7週(週2コマ連続授業)にわたって行い,7月17日が最終となります.講義内容は以下の課題に沿って行います。
    課題1 ガイダンス,科学はどのようにして発展してきたか? 帰納法と演繹法

    課題2 物理とはどのような学問か?

    課題3 工学と理学の違い

    課題4 情報の学生が物理を学ぶことの目的と必要性

    課題5 物理を学ぶ上での基礎事項

    課題6 ニュートンの法則(概略)

    課題7 どのようにしてニュートンの法則が完成されたか

    課題8 大学の物理を学ぶための絶対に覚えておかなければならない基本事項

    課題9 種々の運動の大学における取り扱い方

    課題10動いている座標系における運動

  4. 授業の進め方
      みなさんの身近な実体験からの物理的な現象を取り扱います(頭で知っている知識ではありません).
    ですからみなさんの経験や感性が重要です.
     また,具体的な数値で計算してもらい,それぞれの物理量を実感してもらいます.そこで「関数電卓」(できれば物理定数が入っているもの)があると大変便利です.

      授業は,このインターネットで,その授業の課題を示します.そこで,みなさんは小生の講義を良く聴いて,その課題に対する回答を各自まとめてみて下さい.その結果,この授業が終了した時点で,あなた独自の教科書が完成するわけです.


 では,本日の授業を始めましょう.

課題1:科学はどのようにして発展してきたか?(帰納法と演繹法)

  ここで大事なことは,原理から出発して新しい発見があるのではないことです.受験勉強で養われた物理の勉強方法をここで破棄して下さい.

課題2:物理とはどのような学問か?

  まず,自然科学とは?・・自然の中にあるさまざま現象の奥にある規則性・法則を探る.

  そこで,物理学とは?・・上記を行うための基礎の学問である.研究の対象が決まっている学問ではなく,「研究の方法」や「考え方」によって特徴づけられた学問.

  高校で「物理」,「化学」,「生物」,「地学」のように並列に理科が分類されていましたが,その関係はこのようになっているのです.

課題3:工学と理学の違い.

  • 扱う対象が同じでも,研究に取り組む目的が異なる.

  • 研究テーマの設定が異なる.

課題4.情報工学科の学生が物理を学ぶことの目的と必要性

  研究室紹介,前期の情報ゼミナールから良くわかっているのでは.

課題5:基礎事項

  5-1; 単位の話

5-2; ベクトルの話.

5-3; 物理や工学で扱う数学と純粋数学との違い


課題6:ニュートンの法則(概略)

第1法則(慣性の法則)
  外力が存在しない場合,物体は直線上を一様な運動(静止も含む)の状態を続ける.

第2法則(加速度の法則 F = ma)
  時間による物体の運動(運動量)の変化の割合は,作用された力の大きさに比例し,*作用した力の向きに起こる.

第3法則(作用・反作用の法則)
  一つの物体が第二の物体に力を及ぼせば,第二の物体は等しく反対の向きの力を第一の物体に及ぼす.

質量保存の法則

  閉じた系の中の物質の総量は一定(?)

運動量保存の法則

  2物体が相互作用した場合,作用の前後での全運動量は変化しない.

万有引力の法則
  宇宙の全ての物質粒子は,他の全ての物質粒子を,2粒子の質量の積に比例し,それらの中心間の距離の2乗に反比例する力で引く.その力は,それらの中心を結ぶ線に沿った向きをとる.


課題7:どのようにしてニュートンの法則が完成されたか.歴史的な検証

  1. アリストテレス(BC384−322,古代ギリシャ時代)の物理
    彼が抱いた4つの疑問

    (1) 物体は何からできているのか?

    (2) 物体はなぜ落下するのか?

    (3) 太陽,月,星はなぜ動くのか?

    (4) 投げた物体はなぜ運動を保つのか?

    上の疑問に対する彼の仮説

    (1) 地上の物体は,4種の第一物質(土,水,空気,火)からできており,物体の運動は,それぞれの物質の基礎的な本性による.天の物質はこれらとは異なるエーテル.

    (2) 4種の基礎運動 1) 変質
    鉄が錆びる,木の葉が紅葉する 2) 自然な局所的運動 土や水は落下,空気や火・煙は上昇:これらの物質は本来あるべき静止の場所に向かう.
    密度が大きな媒質の中では,重い物体の方が軽い物体より速く落下する.
    媒質の密度が小さくなるに従い,両者の速度に差は少なくなる.
    真空の中では,同じ速度.その速度は無限大(?).
    3) 水平なあるいは激しい運動 連続的に押されるあるいは引っ張られた運動と投げられた運動
    (1) の仮説に矛盾・・大変困った
    4) 天の運動 天空の物体は地上の物体と完全に異なる.
    天体は重さのない完全な物体で,天空のエーテルでできている.
    天空の物体は全て球で完全な円軌道の上を動いている.
    天体と天空の運動は,地上の不完全な物体とは違う法則に従う.

    少数の簡単な仮定から出発して,論理的な議論により複雑な問題の記述を行う.

  2. ガリレオ(1564−1642)の力学
      アリストテレスの落下運動と投げられた物体の運動の記述の間違いを確信.
      抵抗の影響を除いた実験から落下物の移動距離は時間の2乗に比例することを発見.(どのように落下するのかを明らかにしたが,「なぜ」は?)
      水平に運動している物体は,一様な運動を保つ(後の慣性の法則).
      放物線運動の解明

  3. 帰納法と演繹法
    帰納法(ベーコン,1561−1626):
    実験結果から一般的法則を導き出す.
    演繹法(デカルト,1596−1650):
    少数の基礎原理あるいは定理から出発して論理的に別の結果を導く.

  4. 解析幾何学,微分積分学(ニュートン,ライプニッツ(1646−1716))
    解析幾何学:
    多くの図形を数学公式で記述できる.
    積分学:
    上記の公式で示された曲線の下の面積を見いだす数学的技術
    速度 - 時間の座標系では,距離となる.
    微分学:
    上記の公式で示された曲線の傾きを定める数学的技術
    速度 - 時間の座標系では,加速度となる.

  5. ニュートン(1642−1727)力学へ
      1687年:プリンキピア(自然哲学の数学的原理)を出版
      アリストテレスの疑問に対してほぼ完全な答えを示した.
      この手法は,基礎的な定義と仮定を提案し,実験からの帰納法に基づいて,運動の3法則や万有引力の法則を含む少数の法則を提示した.そして論理的演繹法により全ての物体の運動は,彼の定義と運動の法則の単なる帰結にすぎないことを示した.
    ニュートンの定義:
    (1)質量(2)運動量(3)慣性 (4)作用する力
    ニュートンの導入した「基本量」
    (1)時間 (2)長さ (3)質量
課題8:大学の物理を学ぶための絶対に覚えておかなければならない基本事項.
  1. 単位の話(資料A.4参照)
    国際的な標準単位(SI単位系)は,mks単位系です.すなわちm(メートル),kgキログラム),s(秒)です.力学においては,この3個の単位が基本となっています.しかし,物理では,電磁気,光,熱等を扱うので,以下ような基本的なSI単位系があります.
        K(ケルビン):絶対温度
        mol(モル):分子量
        cd(キャンデラ):光度
        A(アンペア):電流
       
    力学で良く出てくる単位はmksで次のように表されます.

    力: N(ニュートン)=kg・m・s-2
    例1) 質量10kgの物体をあなたが手に持っていると,10(kg)x9.8(m/s-2)=98(N) の力があなたの手に鉛直下向きにかかっています.
    仕事: J(ジュール)=N・m &nmsp; ・・エネルギーも同じ
    例2)上記の状態から,その物体を1m持ち上げたら,あなたは,98(N)x1(m)=98(J)の仕事をしたこととなります.
    仕事率: W(ワット)=J・s-1   ・・馬力も同じ意味
    例3)例2の仕事をするのに2(s)かかったら,あなたの仕事率は98(J)/2(s)=49(W)です.
    雑学)1馬力は,75(kg)の物体を1(s)で1(m)持ち上げる仕事率のことです.ですからWに換算すると,{75(kg)x9.8(m・s-2)x1(m)}/1(s)=735(W)となります.
    圧力: Pa(パスカル)=N・m-2
    例4) 水深10mと水面との圧力差は,水の密度(ρ=1000kg/m3)x水深(10m)x重力加速度(9.8m/s2)=9.8x104(Pa)となる.
    雑学)気象では,1気圧のことを最近では1013(hPa)といっているが,これは,1.013x105(Pa)のことです.以前は1013(mb)と言っていましたが,これはcgs単位系なのです.しかし1013という値は,あまりにも親しまれたので,MKS単位系でも同じ値になるようhPaという単位を使っているのです.

  2. 物理で用いるギリシャ文字とその読み方(資料A.1参照)
    良く出てきます.物理量(特に電磁気)を表すものもある.
        α(加速度), ε(誘電率), θ(角度), λ(波長), μ(透磁率)
        ν(振動数,電気ではfを使う), π(3.14), ρ(密度,比抵抗)
        σ(電気伝導度), τ(時間), φ(角度), ψ(角度),
        ω(力学では角速度,電磁気・回路では角周波数),  Ω(オーム,抵抗)
      
  3. ついでによく使われる英語(専門に行くと,英語が主流ですので,覚えておいておくこと).
        力学: mechanics,変位:displacement, 力: force, 速度:velocity ,
        加速度: acceleration,運動量 :momentum, 位置エネルギー: potential
        energy,運動エネルギー: kinetic energy, 質量: mass, 慣性: innertia,
      
  4. 測定値と有効数字(ここでは実用的な観点から述べる)
    (1) 誤差について
    (2) 測定値の計算 加減の場合と乗除の場合の値と誤差の処理電卓ではやたら意味のない数字が出てくるから注意のこと.
    (3) 有効数字とは・・表示法の修得・・物理と工学では違う工学では資料A.2の桁数を表す接頭語を良く使うマルがついているのは,よく使います.
  5. スカラーとベクトル
        スカラー:大きさのみの物理量(温度,質量,時間,長さ,面積)
        ベクトル:大きさと方向を持った物理量(位置,速度,加速度,力)
      

  6. ベクトルの取り扱い(ここが,高校と大きく異なる)
    (1) 単位ベクトルの導入
    (2) ベクトルとベクトルのスカラー積(ゴチックはベクトルを示す)
    AB = ABcosθ・・結果はスカラー量
    仕事量(力・変位)がこれに相当します.
    (3) ベクトルとベクトルのベクトル積
    AxB = ABsinθ ・・これは大きさを表す.
    方向は,AベクトルからBベクトルに向けてねじった場合にネジが進む方向.角運動量(半径x運動量)やトルク(半径x力)がこれに相当する.

課題9: 種々の運動の大学における取り扱い方
  以下にいくつかの物体の運動を取り扱うが,高校ではそれぞれについての公式あり,それにより解析を行ってきた.しかし,大学では,簡単な定義と微分・積分により全てが解けることを示す.
定義式:
位置ベクトル:
r = xi + yj + zk  (9-1)
i, j, k はx軸,y軸,z軸の「単位ベクトル」
速度ベクトル:
v = dr/dt  (9-2)
= (dx/dt)i + (dy/dt)j + (dz/dt)k
= vxi + vyj + vzk
加速度ベクトル:
a = (dv/dt)   (9-3)
= (d2r/dt2)
= (dvx/dt)i + (dvy/dt)j + (dvz/dt)k
= (d2x/dt2)i +(d2y/dt2)j +(d2z/dt2)k
= axi + ayj + azk

上記では,微分系で表示されたが,積分系だと以下のようになる.

加速度ベクトル:
a = axi + ayj + azk   (9-4)
速度ベクトル:
v =∫adt   (9-5)
= at + v0
位置ベクトル:
r  = ∬adt2   (9-6)
=∫vdt
= (1/2)at2 + v0t + r0

ここで,v0 とr0は,初期条件として,初速度および初期の座標ベクトルを示す.

ニュートンの第2法則:
F = ma   (9-7)
= m(dv/dt)
= m(d2r/dt2)
以上の関係だけで,物体の運動を解くことができる. では以下の例題について,大学生らしい解法で行って見よう. 実演は,黒板で当日行う.


例題1: 自由落下問題

  この問題は,高校の知識で簡単にとける.しかし,ここでは大学らしい解法を学ぶため,あえて行う.答えが正解であるかどうかが問題ではなく,大学生らしい解法ができるかが問題である.

問題の設定:
  高さh(m)から,質量m(kg)の物体を静かに離した場合,物体のその後の運動についてのべよ.
解法:
(1) この運動は,鉛直方向の一次元運動であるから,Z軸について考える.
(2) t秒後の速度および高さをVz(t),Z(t)とおく.
(3) 初期条件:Vz(0)=0(m/s), Z(0)=h(m)
(4) 物体にかかる力は,重力のみでmg(N)で方向は下向きである.ただし,gは重力加速度で9.8m/s2(注意,有効数字2桁)
(5)そこでt秒後の速度を求める微分方程式は次のようになる.
  m(dVz(t))/dt) = -mg  (9-8)
簡単にすると
  dVz(t) = -gdt  (9-9)
両辺を積分
  Vz(t) = -gt+C  Cは積分定数.
定数に初期条件(Vz(0)=0)をいれるとC=0となり,t秒後の速度,
  Vz(t) = -gt(m/s)  (9-10)
が求められる.

次に
  dZ(t)/dt = Vz(t) = -gt  (9-11)
より,積分する事により
  Z(t) = -(1/2)gt2+C'  (9-12) 
初期条件(Z(0)=h)より C'=hとなり
  Z(t) = -(1/2)gt2 + h (m)  (9-13) 
(9-10)と(9-13)からtを消去するとZとVzの関係が得られる.
ここで,t-Z,t-VzおよびZ-Vzの関係をグラフに描いてみよう.


例題2: 斜め上方に物体を投げた場合

問題の設定:
  地上から仰角θ(rad)で初速度V0(m/s)で質量m(kg)のボールを投げ上げたた時,t秒後の位置,速度および軌道を求めよ.
解法:
(1) 二次元問題なので,X-Z平面で考える.t秒後の位置ベクトルおよび速度ベクトルをV(t),r(t)とする.運動方程式をベクトルで表すと次のようになる.
  m(d2r(t)/dt2) = m(dV(t)/dt) = F  (9-14) 
XおよびZ成分に分けて表現すると次のようになる.
   m(d2X/dt2)i+m(d2Z/dt2)k = m(dVx/dt)i + m(dVz/dt)k    (9-15) 
= Fxi + Fzk
(2) 初期条件:
  X(0) = Z(0) = 0  (9-16)
  Vx(0) = V0cosθ
  Vz(0) = V0sinθ
また,外力は重力のみを考えているので,
  Fx = 0  (9-17)
  Fz = -mg
となる.

(3) それぞれのベクトル成分ごとに独立に解く.
X成分について
  m(dVx/dt) = 0
時間で積分して
  Vx(t) = C (定数)
初期条件より
  C = V0cosθ = Vx(t)  (9-18)
更に時間で積分して
  X(t) = V0cosθ・t+C'
初期条件より
  X(t) = V0cosθ・t  (9-19)
が求められる.
Z成分について
  m(dVz(t)/dt) = -mg  (9-20)
時間で積分して,
  Vz(t) = -gt+C
初期条件より
  Vz(t) = -gt+V0sinθ  (9-21)
更に時間積分により
  Z(t) = -(1/2)gt2 + V0sinθ・t+C'
初期条件より,C'=0となり
  Z(t) = -(1/2)gt2 + V0sinθ・t  (9-22)

(4) t秒後の速度ベクトルと位置ベクトルは以下のようになる.
  V(t) = V0cosθ・i + (-gt+V0sinθ)・k  (9-23)
  r(t) = (V0cosθ・t)i+{-(1/2)gt2+V0sinθ・t}・k  (9-24)
軌道は(9-19)と(9-22)からtを消去して
  Z = -(g/(2V02cos2θ))X2+tanθ・X  (9-25)
この式から到達距離および最高高度は次式で与えられる.
  Xmax = V02sin2θ/g  (9-25)
  Zmax = (V0sinθ)2/(2g)  (9-26)
最も遠くまで投げるには,仰角が何度か?
(9-25)が最大となるためには, sin2θ=1 すなわちθ=π/4=45度. そのときの到達高度 Zmax = V0/(4g)(m)となる.


例題3: 円運動

問題の設定:
  半径r(m)のひもの先に質量m(kg)の物体を角速度ω(rad/s)で水平面(X-Y平面)内で回転させた場合の運動について述べよ.ただし,物体にかかる外力は,ひもの張力T(N)で,その方向は中心に向かっている.
解法:
(1) t秒後の中心角をθ(rad)とすると,ωとの関係は次のようになる.
  θ = ωt  (9-27)
  ω = dθ/dt
(2) X軸からの円弧の長さLは以下のようになる.
  L = rθ
物体の速さは,
  V = dL/dt = r(dθ/dt) = rω  (9-28)
(3) 物体の運動方程式は,ベクトルで表すと以下のようになる.
  m(d2r(t)/dt2) = T  (9-29)
  m(d2X(t)/dt2)i + m(d2Y(t)/dt2)k = Txi + Tyj  (9-30)
ここで,
  Tx = -Tcosθ,   Ty = -Tsinθ
(4) (9-30)式を,X,Y成分に分けて独立の運動方程式を書くと次のようになる.
  m(d2X/dt2) = m(dVx/dt) = -Tcosθ  (9-31) 
  m(d2Y/dt2) = m(dVy/dt) = -Tsinθ  (9-32) 
(9-27)式より θ=ωtとおける.
X成分については,(9-31)式を積分して,速度および位置が以下のように求められる.
  Vx(t) = -(T/mω)sinωt = (T/mω)cos(ωt+π/2)  (9-33)
  X(t) = (T/mω2)cosωt  (9-34)
  Vy(t) = (T/mω)cosωt = (T/mω)sin(ωt+π/2)  (9-35)
  Y(t) = (T/mω2)sinωt  (9-36)
(9-34)と(9-36)の両辺を2乗して和をとるとtが消えて物体の軌道が以下のように求められる.
  X2 + Y2 = (T/mω2)2 = r2  (9-37) 
これは,円の軌跡である.
  T = mrω2
を向心力という.
速度に関しては,X,Y成分について位置ベクトル成分と比較すると,π/2(90度)だけ進んでいるから,位置ベクトルと速度ベクトルは直交していることがわかる.


例題4: 単振動(バネの振動)

問題の設定:
  水平におかれたバネ(バネ定数k)に質量m(kg)の物体がついていて,平衡点からX0(m)のばして離した後の運動について述べる.
解法:
(1) X軸方向の一次元運動を考える.平衡点から右側にX(m)の位置における運動方程式は次のようになる.
  m(d2X(t)/dt2) = -kX  (9-39) 
この微分方程式は,みなさんには現在の段階では解くことができません.しかし,なれてくるとこの解を想像する事ができます.すなわち以下のような解を仮定できるのです.
  X(t) = Asin(ωt+φ)  (9-40)
A(振幅),ω(角速度,角周波数),φ(位相)の物理量は,ここでは未知の量です.(9-40)式を(9-39)式に入れると以下の関係が得られる.
  2 = k
これから
  ω = √(k/m)  (9-41)
また,初期条件では,t=0で最大振幅X0となるので,次の関係となる.
  X0 = Asinφ  (9-42)
これから, A=X0, φ=π/2が得られ,解は以下のようになる.
  X(t) = X0sin(ωt+π/2)  (9-43)
注)周波数f(Hz)と角周波数ω(rad/s)の関係は ω=2πf バネの振動周波数は,k/mの平方根に比例留守する.
この結果をグラフに書いてみよう.


例題5: 単振子

問題の設定:
  長さ L(m)のひもの先端にに質量m(kg)の物体が取り付けられ,振り子として揺れている.ただし揺れは小さいものと仮定する.
解法:
(1) 揺れの角度をθ(rad)とすると,接線方向の変位をs(m)とする.
接線方向の外力は Fs = -mgsinθとなるから,運動方程式は以下のようになる.
  m(d2s(t)/dt2) = -mgsinθ  (9-44) 
ここでθは小さいと仮定しているからsinθ≒θと近似できる.また,θ=s/Lの関係から(9-44)は以下のようになる.
  d2s(t)/dt2 = -(g/L)s(t)  (9-45) 
この微分方程式は例題4の場合と全く同じ形をしているから解は以下のようになる.
  s(t) = S0sin(ωt+φ)  (9-46)
ここで ω2 = g/L. S0とφは, 初期条件により決まる.
振動周期は T = 2π√(g/L)(s) 等時性を示している.振幅,質量に依存しないで,ひもの長さのみのより決まる.


宿題(大学生らしい解法で示せ)解答を要求しない.試験で実力を示せ.

宿題1:
  ある物体を鉛直上方に地上から初速度10m/sで投げた場合の最高到達高度と高度の時間変化をグラフに示せ.

宿題2:
  東京タワーの展望台(高さ300m)から,水平方向に野球のボールを時速100kmで投げたときの軌道をグラフに示せ.

宿題3:
  陸上競技のハンマー投げの選手がどうしてすごい体をしているのか. また,どうしたらオリンピックで日本選手が金メタルをとることができるか,ここまでのわずかな力学的知識から考察せよ (小生もわからないのです.みなさんから良い案が出たらJOCに提案します).
宿題4: 例題4では,バネを水平に起きましたが,垂直にした場合にはどうなりますか.


課題10: 動いている座標系における運動

以下の問に,あなたの実体験から推察せよ.
問1:
  等速度vで走っている電車の中でボールを落としたら,電車の中の人にはどのように落ちていくように見えるか? さらに電車の外の地面に立っているいる人にはどのように見えるか?
問2:
  電車が加速度aで走っている場合には,どのようになるか.


さあ,大学では,この問題をどのように取り扱うのか.授業が楽しみです.